カフェオレと方眼紙

ちょーけっしゃ短歌ユニット「うるしのこ」が短歌よみます

個人評・のつ(1)きちんと、だなんて、途方もないね

持ち寄った歌について個人による一首評も書きましたので、掲載します。

まずは
urushinoco.hatenablog.com
の一首評(のつ)より

当時歌集を読んで、このように生きたい。と思って、ノートに書き写した歌。

恩を返すように、ということは恩をかけてくれたそのひと自身に恩を返すイメージがあるのだけれど、
恩を返すように「生きる」というと、映画の「ペイ・フォワード」のように、かけてもらった恩をまた別の誰かに手渡すようなそういう広がりがあって、その広がりのなかに進んでいけるような感じだった。

でも作者について色々知っている現在、この歌を改めて読むと当時のわたしは生きるということを何も知らなかったんじゃないかとか、すごくうっすら読んでいたのではないかとか思えるくらい、あまりにも痛切な気がして、このようにしてまで生きなければならないのか、という気もしている。

よく「きちんとしたい」とか「きちんとして」とか言う。

きちんと、という語にはどうやら「責任」みたいなものがついてまわるらしい。

「つめて」からの一字あけた間をおいての、「きちんと」にたどり着く前に、この瞬間で呼吸したみたいな、そういう短い一瞬の空白があって、このひと呼吸でこの人は生きることを決めてしまったのだ、と思うとひりひりしてしまう。

勝手に世界に投げ出されて最後には死んでいく、そんな状況のなかで、決意のうちに生きようとした。

ということがあるのかもしれない、

その強さに私たちは途方も無い距離を見る。